ふるさとの家から
ルカ・ホルスティンク
談話室
マーコ
野宿者の糧風前
朝日新聞
相談室
トリヤマタロウ(マエダ)
労働者の手
堀部敬子
2階・ともの広場
堤 年弘
ふるさとの家と反失連
本田哲郎
JYVA1年間ボランティア
永野 努
事務所より
ふるさとの家で必要なもの
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「ふるさとだより」2004年12月

直線上に配置

相談室  トリヤマタロウ(マエダ)


 最近、野宿をしている方から戸籍についての相談を受ける機会がありました。本人の知らない内に戸籍上の名前が変わり、子供がいることになっているという内容です。

 警察に相談すると、本人こそが被害者であるということを認められず「悪用した戸籍を使った契約相手、もしくは戸籍を扱う市役所が被害者だ」と言われ、被害届を出すこともできませんでした。また、市役所に相談すると「正規の手続きを経た届出は、家庭裁判所の決定がなければ修復できない、被害届もその後になる」と言われました。

  

 結局、家庭裁判所へ養子縁組の無効を申し立てすることになりましたが、申し立てから3〜4ヶ月後、ようやく開かれた調停は不成立となりました。相手の所在がわからないためです。もしかすると、相手も被害者なのかもしれません。結局申し立ては却下され、現在訴訟の準備中です。最初の申し立てから調停、訴訟、判決に至るまで1年以上はかかるようです。このように時間も費用もかかることですが、法律上被害者とは認められず、手続きの準備も本人一人で行うことになります。法律扶助を利用し弁護士に頼るにしても、10数万の費用がかかります。手続きが複雑な上、野宿していると特に金銭的に余裕がなく、泣き寝入りをしている方も多いのではと思われます。その一方で弱者を食い物にする奴等は今も堂々とのさばっているのです。

 弱い人をねらう犯罪が増える一方で、私たちの暮らしを支える仕組みも大きく形をかえようとしています。例えば、イラクでの戦争が続く中で、生活保護の国庫負担率を引き下げようとする動きがありました。これまで2回、生活保護費の国庫補助金の削減が計画され、いずれも防衛費の増強の計画と同時期だったとききます。国の負担が削減されれば、地方自治体の負担が増え、現場での生活保護の受給抑制がいっそう強まることになり、生活保護費も削減されてしまうでしょう。すでに生活保護では70歳以上の方に支給されてきた老齢加算金は減らされています。生活保護制度、年金制度、介護保険制度がいっせいに見直しを考えられています。よりよい制度になっていくことは歓迎すべきことですが、財政的な理由からのサービス縮小は、サービス利用者にしわ寄せが行くにすぎません。「改悪」ではなく「改正」されることを望んでいかねばなりません。

 ふるさとの家を毎日利用している83歳のおじいちゃんがいます。近くのアパートに住み、生活保護を受けています。アパートには介護保険でヘルパーさんに来てもらっていますが、生活保護や介護保険の仕組みが変わると生活はどのように変化してしまうのでしょうか。昔、戦争にかり出され、戦後シベリアで抑留された経験をお持ちの方です。青年期を戦争に奪われただけではなく、人生最後のステージをも戦争(防衛費)に奪われてしまっていいのでしょうか。

 釜ヶ崎で活動していて、はっと気が付くと、目の前の急を要することに精一杯な自分がいます。その一方で、自分とは関係がないかのように社会はものすごいスピードで動いています。何が大切なのかを見極めながら、僕はひとりひとりの人、みんなとつながっていきたいと思います。しんどい人がもっとしんどくならないことを祈りながら。