ふるさとの家より
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談話室より
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2階・ともの広場
つつみ としひろ
もうひとつのクリスマスー釜が崎ー
本田 哲郎
事務室より
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「ふるさとだより」2006年12月

直線上に配置

二階・ともの広場     つつみ としひろ


 今年は七月下旬から、気温30度以上の真夏日が34日も続いたりして、まったく暑い夏でした。

 と言いましても、今はもうすっかり冬。これから寒さが増す中、外で過ごさなければならない人にとって辛い気候です。それに殆どの人は、夜もおちおち寝ていられません。

 十一月下旬、岡崎市の河川敷に住んでいた女性が、全身を殴られ殺害され、近くに住む人たち合計8件も殴る、蹴るの暴行を受けた事件がありましたが、彼らの弱みに付け込んだ、いたずら、襲撃、そして暴力。これに類する事件がここ釜ヶ崎周辺でも後をたちません。

 そしていま頻々と起こっている「いじめ」、これは何も学校だけに起こっている問題ではなく、企業や一般社会にもあります。これらに共通するのは競争社会だからと勝ちだけを良しとし、一方、敗者(弱者)と見られたら最後、陰湿ないじめを受け、時には死に至り、又自殺に追い込まれる。いじめる方の多くの場合、ゲーム感覚で一人を集団で標的にするのですからどうすることも出来ません。こんな人間を大切にしない社会、しかもますます格差が広まっていく現在の日本社会をどうして“美しい国”と言いたがるのでしょうか。

 この街の数少ない昼間を中心とした休養施設として開いている、ふるさとの家にも暖房に火が入り、より多くの人が出入りするようになりました。労働者が嫌がらせを受けることもなく、思い思いに、今日のひとときを過ごしています。そして晩の終了後に、掃除のお手伝いをしてくれる人がいますが、Nさんもその一人です。「わしはここで世話になったんや」と毎日、痛い足を引きずりながら、それでも手際よく次々と作業をしてゆきます。生活保護が受けられるようになり、足の痛みも専門医にかかって良くなってきたのですが、最近回ってきた担当者から「足が良くなったきたのなら、少しでも働けとボロクソに言われた」と嘆いていました。六十歳を過ぎ、体力の衰えた人に、まともに仕事などあろうはずはないのに、社会福祉費削減の末端を担う立場からの発言でしょうが、精神面でも弱くなっている人に対する高圧的な発言は許されません。

 またSさんは、若いころから埃を嫌う塗装関係の仕事をしていた人です。大変ずぼらな私などは、物があっても移動せず、丸く掃き、掃きにくい奥の方は手出ししません。ところがSさんは隅にあるものを邪魔くさがらずに前に移動して、奥のほうは障害物を取り除いてごみを掃いています。彼は「後の仕事のことも考え、二度掃除しなくて良いように最初からきっちりとしている」と言います。彼はもう仕事をとっくに引退していますが、それでもいったん掃除道具を、持てば、人が見ていようが見ていまいが、徹底して掃く。職人気質で本当に真面目な人だと思います。彼の手抜きしない几帳面さを見ていて、丸くよりもきっちりと四角に掃いたほうが気持ちがいいと改めて感じさせられています。Sさんのほんのたまに見せる笑みは素敵です。私がこの街で過ごす時間はわずかですが学ぶことは多々あります。