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「ふるさとだより」2006年12月

直線上に配置

相談室から              トリヤマタロウ


 このさき、どうなってしまうんだという不安の中のひとつに社会保障がある。今年度は介護保険の改正や障害者自立支援法がスタートした。家族介護が前提の介護保険は元々単身者には使いづらく、改正されたらより複雑になった。障がい者が地域で安心してくらせるようにとつくられたはずの自立支援法は、障がい者に、より負担をあたえる法律だったようだ。生活保護制度もこの数年見直されて、まず老齢加算が廃止され、母子加算も縮小が検討されている。生活保護費が国民年金や一般の母子世帯の平均収入よりも高い基準という理由である。生活保護の基準以下で暮らす人々がどれくらいいるのか、一般の母子世帯の生活実態はどうなのかを調査も議論もせずしてである。国からは他都市に比べ大阪市の生活保護の運用が甘いのではと言われているときく。しかしふるさとの家で生活保護の申請に同行した時に、「申請」を「相談」で留めようとする福祉事務所の意識を感じる。強引な就労指導や法的根拠のない指示、指導もきりがない。これで大阪は甘いといわれるなら、他都市の福祉事務所はよりひどい運用をしている無法地帯ということになる。これまでも各地で起きてきた餓死事件が今後も続発するのだろうか。

 よく新聞で「失業率」についての記事が書かれているが、あれは毎月総務省が発表している労働力調査が元になっている。この12月発表の調査結果で総務省は「雇用情勢は全体として改善している」と分析していた。この調査は全国から約4万世帯を選んでやっているそうだが、この「失業率」の数字は見せ掛けほどには単純ではない。1週間という短い期間の調査期間に収入を伴う仕事を少しもしなかった人のうち、就業が可能で、就業を希望し、かつ求職していた人を「完全失業者」とみなして、この期間にちょっとでもアルバイトなどをしていれば「就業者」としてカウントされるし、仕事を探せない状況下にいる人は失業者ではなく「非労働力」とみなされて、失業率の枠からはじかれてしまう。僕は「完全失業者」ときくと、釜ヶ崎での失業した労働者のイメージを重ねてしまう。しかし「失業率」の数字が示しているのは釜ヶ崎の現実ではなく、不完全な「失業」像なのだ。仕事がなく、寝る所もなく、ご飯を食べられない、という絶対的な貧困がここにあるのに。

 11月頃から、寒さで体調を崩し、相談に訪れる労働者が増えた。毛布、寝袋を求める相談は毎日ある。この季節になると、長期入院していた方が、急に病院を退院になって(おそらくは病院の都合で)釜ヶ崎に戻ってくるケースが増えてくる。アパート暮らしをしている場合であっても安心できない。暖房などない部屋もある。一人暮らしで、体調の変化に気づいてくれる誰かがいない。そのような状況の中、「生きて春を迎えよう」と気持ちを込めて今日も相談室を開く。このさき、どうなってしまうんだという不安の中のひとつに社会保障がある。今年度は介護保険の改正や障害者自立支援法がスタートした。家族介護が前提の介護保険は元々単身者には使いづらく、改正されたらより複雑になった。障がい者が地域で安心してくらせるようにとつくられたはずの自立支援法は、障がい者に、より負担をあたえる法律だったようだ。生活保護制度もこの数年見直されて、まず老齢加算が廃止され、母子加算も縮小が検討されている。生活保護費が国民年金や一般の母子世帯の平均収入よりも高い基準という理由である。生活保護の基準以下で暮らす人々がどれくらいいるのか、一般の母子世帯の生活実態はどうなのかを調査も議論もせずしてである。国からは他都市に比べ大阪市の生活保護の運用が甘いのではと言われているときく。しかしふるさとの家で生活保護の申請に同行した時に、「申請」を「相談」で留めようとする福祉事務所の意識を感じる。強引な就労指導や法的根拠のない指示、指導もきりがない。これで大阪は甘いといわれるなら、他都市の福祉事務所はよりひどい運用をしている無法地帯ということになる。これまでも各地で起きてきた餓死事件が今後も続発するのだろうか。

 よく新聞で「失業率」についての記事が書かれているが、あれは毎月総務省が発表している労働力調査が元になっている。この12月発表の調査結果で総務省は「雇用情勢は全体として改善している」と分析していた。この調査は全国から約4万世帯を選んでやっているそうだが、この「失業率」の数字は見せ掛けほどには単純ではない。1週間という短い期間の調査期間に収入を伴う仕事を少しもしなかった人のうち、就業が可能で、就業を希望し、かつ求職していた人を「完全失業者」とみなして、この期間にちょっとでもアルバイトなどをしていれば「就業者」としてカウントされるし、仕事を探せない状況下にいる人は失業者ではなく「非労働力」とみなされて、失業率の枠からはじかれてしまう。僕は「完全失業者」ときくと、釜ヶ崎での失業した労働者のイメージを重ねてしまう。しかし「失業率」の数字が示しているのは釜ヶ崎の現実ではなく、不完全な「失業」像なのだ。仕事がなく、寝る所もなく、ご飯を食べられない、という絶対的な貧困がここにあるのに。